転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜
124 お手伝いと便利?な魔法
「じゃあ、お昼ごはん食べたらお手紙を届けに行くね」
「ん? いや、それは明日でいいだろ」
パーティーで補助をする魔法を調べる必要がなくなったから司祭様のお手紙を午後から届けに行くねって言ったんだけど、そしたらお父さんからこんな返事が返ってきたんだ。
「え〜! だってさっき、僕が図書館に行くって言ったら止めたじゃないか」
「いや止めて無いぞ。また行くのか? って聞いただけだろ」
そう言われて、僕はさっきのことを思い出す。
……ホントだ。お父さんはまた図書館に行くの? この間行ったばっかりじゃないかって言っただけだった。それにお母さんもどんな本を読みに行くのかって聞いたけど、行っちゃいけないなんて言ってなかったよね。
「じゃあもしかして、図書館に行ってもよかったの?」
「ああ、別にいいぞ。あれだけ獲物を獲ってきたんだから、ルディーンが草原に狩りに行く必要も無いしな」
そうなんだ。でもなぁ、補助の魔法を探すって目的がなくなっちゃったから、図書館に行く理由もなくなっちゃったんだよね。
だからその話をお父さんにしたんだ。そしたら、
「なんだ、図書館に行かなくてもいいのか。ならお父さんたちと一緒に、解体した魔物の素材の処理をするか? 手伝い程度の事しかできないだろうけど、勉強にはなるぞ」
「いいの? 僕、やってみたい!」
こうして僕は、お父さんやお兄ちゃんのお手伝いをする事になったんだ。
「肉をご近所におすそ分けするのはシーラたちの役割だから、俺たち男の仕事は皮の下処理や素材になる骨に付いた肉を取り除くのが主な仕事だな」
解体したまま放って置くと皮は腐っちゃうし、骨もお肉が付いたままだとそこから悪くなっちゃうんだって。だからお父さんたちは今朝から昨日解体した素材の処理をしてたんだってさ。
言ってくれたら僕も手伝ったのに!
そう思ってお父さんたちに言ったら、僕はまだ小さいからやれる事があんまり無いんだって言われちゃった。
「なめす前段階で汚れを取るために皮を煮るんだが、その皮はかなりの水分を吸ってるからルディーンじゃ重すぎて干す事はできないだろ? それに骨の肉を取り除くのも結構力がいるんだぞ。だからまだルディーンには任せられないかなぁ」
「それじゃあ僕、何もできないの?」
お父さんにそんな事を言われて、しょんぼり。
でもお父さんは、朝の内はやる事がなかったけど今ならあるぞって言ってくれたんだ。
「朝一番に煮た皮が干してあるだろ。その中でも比較的小型の一角ウサギの皮ならそろそろ乾いてるだろうから、それを順番に取り込んでいってくれ。そうしないと次が干せないからな」
いつもなら1匹か2匹分しか取れないからそんなに大変じゃないらしいんだけど、僕たちがいっぱい狩ってきたもんだから今日はその煮込んだ皮を干す場所も無いんだよね。だから乾いたものはさっさと取り込んで、次のを干す場所を作らなきゃいけないんだ。
でもお父さんは鍋に付きっ切りだし、お兄ちゃんたちは魔物の骨からお肉をこそげ取るのに忙しいから、その役目を僕が任されたって訳。
「うん! 僕、頑張るよ」
「おう、頼むぞ。ただちゃんと乾いてるのだけだぞ。湿ってるのを取り込んだら、明日着いてる脂や肉を取るのが大変だし、その後の処理も困るだからな」
そう言われたから僕は一枚一枚、一角ウサギの皮を調べていったんだ。
「あれ? 乾いてるの、一枚も無いよ」
ところがお父さんはそろそろ乾いてる筈だって言ってたんだけど、みんな微妙に湿ってるんだよね。
いくら小さめの一角ウサギだって言っても普通のウサギよりかなり大きいから、どうしてもふちの方が少し湿ったままで完全に乾いてなさそうなんだ。
でも困ったなぁ。これだとやる事がないや。
そう思った僕は、ある事に気が付いた。そうだよ、湿ってるなら乾かせばいいんじゃないか。
「えっと、確か一般魔法にあったはずだよね」
僕はステータスの一般魔法の欄を開くと、そこに並んでる魔法の中からお目当ての魔法を探したんだ。
「あった! この魔法があれば、湿った皮を乾かすのなんて簡単だよね」
僕が探してたのはドライって魔法なんだ。
この魔法、説明の欄には野営時に切ったばかりの木や掃ったばかりの枝にかけて薪にする時などに使うって書かれてるんだけど、名前がドライなんだから他の物でもちゃんと乾くと思うんだよね。
と言う訳で次の皮を乾かす場所を空けるために、早速ちょっとだけ濡れてるなめし皮にドライの魔法をかけてみたんだ。そしたら、
「あれ? からからになっちゃった」
僕のイメージだと汚れを取るために煮ただけなんだからもっとしっとりとして無いとおかしいと思うんだけど、何か皮鎧にした後みたいにからからで硬い皮になっちゃたんだよね。
それを見て、もしかして折角洗った皮をダメにしちゃったかも!? って思った僕は、それをお父さんのところに持って行ったんだ。
「どうしたんだ? これ」
そしたら、その皮を見たお父さんはびっくり! そりゃそうだよね。だってどう考えても朝から干してるだけで、こんな風にからからに乾くなんて事あるはず無いもん。
「これ、もうダメ?」
「あ〜そんな事は無いが、これだけ渇いてるとなると脂や肉は簡単に取れるかもしれないけど塩漬けにする前にもう一度煮ないとダメかもなぁ」
お父さんが言うには最初に煮るのは毛が生えてるほうの汚れを綺麗にしたり付いてる肉や脂を取りやすくする為らしいんだけど、こんなにからからだと汚れは取りやすくてもその後の処理がやりにくくなるから、もう一度煮ないといけないんだって。
でも、乾かしすぎて完全にダメになっちゃったわけじゃないって聞いて一安心。もしそうだったら大変だもんね。
「ところでルディーン。お前、何をやったんだ? 流石に天日干ししただけで、これだけ乾く事は無いだろう」
「うん。あのね、ドライって言う一般魔法を使ったんだよ」
僕の話を聞いて、納得のお父さん。
「なるほど、魔法か。それでその魔法を使ったら、みんなこんなに乾いてしまうのか?」
「どうだろう?」
さっきのは殆ど乾いてる皮に使ったけど、濡れてるのに使ったらどうなるかなんて解んないんだよね。
だから僕はやって見ないと解んないってちゃんとお父さんに言ったんだけど、そしたら丁度煮終わったのがあるからそれにその魔法をかけてみなさいって言われたんだ。
「うん。やってみるね。<ドライ>」
「おっ、いい感じじゃないか」
だから僕は釜から出して冷ましてる途中で、まだびしょびしょの皮にドライの魔法をかけてみた。そしたら完全には乾ききらなかったけど、さっきみたいにからからになる事もなかったんだよね。
それを見たお父さんは上機嫌。これならこの作業だけじゃなく、なめす時も乾かす時間が短くて済みそうだって言ったんだ。
だけど、それはちょっと無理なんじゃ無いかなぁ。だって、いくらあんまりMPを使わない一般魔法だって言っても、何十回も使えるわけじゃないんだからね。
「お父さん。干す所が無いからってちょっとだけ乾かすならいいけど、いっぱいやるのは無理だよ」
「そうなのか?」
「うん。MPが無くなっちゃうから、こんなにいっぱい乾かせないんだ」
そう言いながら僕は周りを見渡した。
そこには僕とお兄ちゃんたちで狩って来た魔物の皮が物凄くいっぱいあるんだもん。こんなに何回もドライの魔法をかけられないよ。
「そうか。まぁ確かにそんなうまい話は無いわな」
そんな僕の話を聞いて、残念そうではあるけどお父さんは笑いながら納得してくれたんだ。
そんなお父さんを見て、安心した僕はもう一度回りにつまれた皮を見て、
「いっぱいあるもんね」
って笑ったんだけど……あれ? 何かおかしいぞ。
その時、僕の頭に何かが引っかかったんだ。
なろうが追いついてきたので、話数を稼ぐ為に次話は明日か明後日に更新予定するです。
また、これからは4000文字を超える時は2,000文字台の2話に分けて連日更新にするようになるかも。